幻が視る固定未来
「そうやってそこにいられると困る。オレにはやらないといけないことがある」
「うん大丈夫。私はやっぱり灼蜘君が心配。今まで一度も休まなかったのにずっと休んで、しかも会ってみたら無理してる。何をしようとしているのか教えてほしい」

俯いた顔をあげるとそこにある瞳は一層も燃えているように見えた。何が導火線になったかは知らないが燃え立たせてしまったようだな。
しかも入ろうとしなかった部屋にまで入ってくるんだ、ある意味覚悟したんだろう。

「帰れと言っても帰らない。だったらどうすればオレの邪魔をしないんだよ」
「話を聞かせてくれるまで」

そんなに聞きたいか? めんどくさい。もう周りの目なんか気にしてられるか。
やりたいことを明確にしないといけないなら言ってやるよ。

「オレは有希乃を具現化するんだよ」

はっきりと迷いもなく言いきった。
普通なら頭の上に“?”でも浮かべるところだろうが普通じゃない奈々はオレの言葉の意味を探ろうと考えてるんだろうな。オレの言葉に深い意味などないのに。

案の定、停止した奈々の表情。
確実に意味を考えてる。絶対に理解など出来ない難問。

それがオレと奈々の差だ。オレ達のような人とは違う存在でなければ分からない。思いもつかないだろう。
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