幻が視る固定未来
「無駄だ、普通じゃ考えられない」
「灼蜘君は有希乃さんを具現化出来ると思ってるの?」

一瞬、奈々がオレの言葉を理解したと思い焦った。
けど違う。奈々ならありえる。オレの言っている意味が分からずとも、理解せずともそのままオレの言葉を受け取る。
分からないなら考えない。だから奈々はオレが“有希乃を具現化する”としか考えない。
でも、そうなるとオレは八方塞だ。どうにもならない。

「言っている意味もわからずに聞いてくるな」
「分からないよ。灼蜘君だって分かっているでしょ? 私には灼蜘君がやろうとしていることは分からない。でも、それが本当に出来るかどうかを聞くくらいなら出来るよ」
「出来るさ、やってやる。絶対にだ!」
「本当に出来るの? 灼蜘君が今まで学校に来なかった分、ずっと費やしてやっても出来なかったことを、このまま続けても出来るの」
「時間がかかるだけだ。オレは絶対に成功させる」
「灼蜘君一人で成功させるって言っても相手が、木下さんも同じことを思ってないと無意味じゃないのかな」

どんなに言葉を巧みに使おうとも、やはりそうなる。奈々のようなそっち側の人間ではそうゆう解釈にしかならない。有希乃が死んだということに検討もつかないだろう。
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