幻が視る固定未来
「その程度だ、所詮」

投げ捨てるように言った。

その言葉の意味、奈々なら分かる。
明らかに落胆した表情を作り、一気に熱を下げる。

奈々にはショックでならないだろう。どうしょうもないくらいショックでどん底に落とされただろう。

「木下さんのためにすることなら、私も協力したかった。でも今の灼蜘君は自分の気持ちを相手に押し付けているだけじゃないかな。それだと良い結果なんか――」
「――うるせぇ!! 何も知らねぇやろうが調子に乗ってんじゃねぇ!」

キレた。
本気でキレた。

何も知らないにしてもそれは言い過ぎだ。相手が奈々だろうと容赦しない。

これは威嚇なんてものじゃない。オレが敵と認めた相手に出す“殺気”そのものだ。
しかし、それでも奈々は表情は変わらない。ここまで行くとオレ以上に凍りついた表情は冷たく見える。
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