幻が視る固定未来
――確かにここにはトレーニングをするために来た。けどそれは普通のトレーニングではない。

そう、ここには玄武としてのトレーニングをするために来ている。

オレは自分に眠る玄武の能力を理解している。それは父が今後のオレのために文書として玄武の全てを残してくれたから。
だからオレは守護四神玄武の固有能力である“幻視の扉”を扱うことが出来る。
どうやらこの能力の名前が由来でオレの苗字は幻視らしい。

とりあえず“幻視の扉”とは、簡単に説明すると自分の思い描く幻の空間に相手を閉じ込め、その空間内では自分の思った通りのことをすることが出来る。
どうやら幻の空間でも痛覚はそのまま肉体へのダメージとなるらしく、もちろんのことその空間で死ねば死んでしまうらしい。
まだオレはその域には達していない。今のオレは“空間の創造”という幻視の扉を発動させるためにトレーニングしている。
つまり今のオレにはまともな幻視の扉は扱いきれない。だけど単純な幻程度なら視せることは出来る。

――けどそれは幻視の扉ではない。ただの“幻視”という生まれ持っての才能でしかない。
幻視の空間に閉じ込めてからこそ、真の玄武として能力を使ったということになる。
ただ空間の創造には人それぞれの個性があるため、こうやってやれば創れるというものを文書には書いていない。
書いてあるのはただ『自分が苦もなく意識せずとも幻視を発動できる、そんな時にこそ自分固有の合図と共に幻視の扉は開かれる……ようはだな、何回も幻視を駆使してやりやすい幻視の発動を探せってことだ。そうすればその内見つかる。少なくてもオレはそうだった』なんて冗談半分の文章で書かれている。
けど何よりもそれを参考にするしかない。だからオレはただ夢中に幻視の力を発動させる。
< 35 / 383 >

この作品をシェア

pagetop