幻が視る固定未来
「ふぅ……」

深呼吸を一回だけして創造する。
手をかざすとその上では、まるでそこには見えない何かがゆっくりと見えてくるような感じに歪み、目の前にはちょうど手に乗るくらいの球体が現れた。そしてそれは次第にボールへと変化していき誰もが知っているサッカーボールを創りだした。
けどそれは所詮幻でしかなく、蹴り上げようとしてもまるで煙を蹴ったかのように足はすり抜けていく。

幻はどう転んでも幻。

けど幻視の扉内では少し違う。幻にも物量が与えられて幻に触れることも出来る……だがしかし、幻視の扉がなくても前玄武である父は幻を具現したらしい。それが父の持つ最強の幻視の能力“具現の幻”という。
オレが使えるかと言われたら正直使えないだろう。文書にも遺伝として残るかは絶望的と書かれている。

この幻視の扉を使う以前に、人から離れた幻視を使うと守護四神として与えられた“神素”と呼ばれるものを消費する。
分かりやすく言うならばゲームなどに出てくるMP(マジックポイント)とか特殊なことを消費するための代償だ。

――実はこの神素とは生きているものならば誰でも持っている。
生物が持つ生きる力、生命力こそが神素に当たる。けど普通の人の神素とは言わば生きている証でしかなく、ただこの世界で生きているという主張でしかない。
だけどオレのような守護四神、いやエデンという世界に住んでいたものの神素とは、生きる主張だけではなく自分を高めるエネルギーでもある。
もちろん生きる力を使うということは使い過ぎると危険ということでもある。無暗に神素は使えない。だからオレは定期的にちゃんと神素が回復してからトレーニングをする。

使った量にもよるのだが人には神素の限界値がある。それ以上は死の境界線でもあるので使うことは不可能だ。
守護四神はもちろん豊富な神素を持ち合わせている。
オレの場合は恐らく守護四神としても並。多くもなく少なくもなくと言ったところだろう。
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