幻が視る固定未来
そこには間違いなく仏頂面の有希乃がいる。
支えてくれた地点でただの幻想じゃない。

成功した。

やっとのことで成功した魂の具現化。いや有希乃の具現化。

それを実感した瞬間、溜まっていたものが滝のように押し寄せてきた。

崩れる足。
地面に膝を付けてオレは泣いた。これが泣けずにはいられない。
生涯でこれっきりかもしれない感動に泣けないなんてのは寂しい。だから泣く。誰の目の前でも。

「玄武は泣かないって言った」
「泣く時は泣くんだ。無茶言うな」
「そう」

水中の視界の中、有希乃が近付きそのまま抱きしめる。
オレが膝がついてる分、有希乃の方が少し高かった。けどそのおかげで気がつけた。
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