幻が視る固定未来
そんなことを考えていると急に木下の水色に透きとおった瞳がオレではなく、その後ろ窓の方に向けられるとすぐに俯いてしまった。
オレは頭に“?”を浮かべながら振り返ると窓ガラスには小さな雫が点々と付いていた。

「降ってきたな。どうするんだ? 勝手に来たから助歌は呼べないし、仕方がないから先生に事情を言って傘でも借りるか」
「……」

オレの言葉が聞こえているないのか、全くの反応を見せようとしない。
けどオレがまた何か言おうとするタイミングで木下は口を開く。本当に狙ってるのか?

「待つ」
「待つって助歌をか」
「灼蜘が終わるの」
「いやいや一般人が普通に学校にいるのはマズイ。それならやっぱりオレが事情を説明して傘を借りてやる」

 しかしそんなオレの言葉に間髪入れず木下は言う。

「待つ」

再度振り向かれた目にはさっき以上に力強いような気がした。表情がないくせに何故か瞳は変化しているように感じているのは不思議だ。ひょっとしたら瞳で感情を伝えてるんだろうか。
だとすればやっぱり木下は“待つ”ことを主張してるんだろな。どうしてここまで主張するのかは分からないがここまで言うならば待たせるか。
だけど廊下をうろつかれるのは駄目だろうし、職員室には客間みたいなのもあるがあの場に木下を待たせるのもなんとも言い難い。
なんか良い場所はないだろうか……。

「あぁ」

頭に電球が光りだしそうなくらいの閃き。
思い立ったらすぐに行動。どうせ休み時間も少ないしな。

「木下、付いて来い」
「了解」

オレは立ち上がり教室のクラスメイト半分の視線を無視して教室を出て行く。
いつもの通り木下はオレの後ろを付いてくるのだが、オレが教室を出たにも関わらず木下は足を止めて一人の女子生徒に何か問題を教えていた。

意外と優しいんだな。

そんな感想と共に木下は一回オレを指さしてからオレの待つ廊下に来る。てかオレに指さすなよ。何を言ったか知らないけど。
そうしてオレが教室を出て行くと騒がしくなり、オレが足を進めると次第に声も聞こえなくなり、窓を叩く雨音しか聞こえてこなくなる。
けどすぐに職員室に着いてオレは大体の説明をして一個のカギを借りた。
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