幻が視る固定未来
「さてと返るか。でも傘借りればよかったかもな。結構降ってるぞ? これを一つの傘で二人はきつくないか」
「気にしない」

別に気にしないならいいけど。せっかく黙って傘を持ってきてくれたのに濡れて帰るのはどうかと思う。

まぁいいか。

立ち寄った場所があったため玄関にはすでにほとんど人はいない。いるのは親が迎えに来てくれるのを待っている生徒だけ。
もちろん木下はそんな生徒の視線を集中させているが、当の本人は全く動じず、まるで何も見えていないかのような振舞い。

オレが気にしてもしょうがないこと。

そうしてオレは傘を開いてかざすと木下が入ってくる。もちろんオレも入っている。 けどやっぱり二人は無理があるらしい。オレの肩にはポタポタト雫が落ちている。木下には落ちていない。
肩幅の差もあるが、オレが傘を少しだけ木下に向けているから濡れることはないだろう。
最後の最後まで他の生徒の視線を集中させながらオレ達は学校を出た。
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