幻が視る固定未来
――スラスラと動かすシャープペンを止め、オレは時計を眺める。

「もうそろそろ十二時か……」

この一言と共にオレはため息が出る。

こんなに広い屋敷ならばもちろんのこと召使いもいる。それも何人も。しかしそれは全て母上の直属であるのだが、急にオレにも直属の召使いを付けると言う。

十二時とはその召使いがやってくる時間だ。

どっちにしろオレには母上の最上級の直属であり、この召使いの長である助歌（じょか）という小母さんが付き人としている。

――けど、どうして今更になってオレに直属の召使いなど付けるんだろ？
理由こそ聞かなかった。ただ母上が言うならば付けるしかないし最初は何も疑わなかった。

「まぁとりあえず……」
行くしかない。

行けばそれなりの紹介もあるだろうし、いきなりオレに召使いを付ける理由を教えてくれる。

そうしてオレは十二時になる十分前に勉強を止め部屋を出る。そして家の中だというのに客間に行くまで五分をかける。
言うまでもなくいくつもの骨董品や色鮮やかな絨毯を当たり前のように歩くが、一切の埃や汚れなどない。
それはもちろん召使いが全てやるからであり、それほどの召使いがいるということだ。
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