幻が視る固定未来
召使い以上、友達以下
結論から言うとだ、結局無言でオレの家まで来た。
けど知っての通り、オレはずっと木下に気を使って肩を濡らしていた訳だが、木下がそのことに気が付くとオレの肩が入るまで近づいてきた。

恥ずかしいというのを本当に知らないだろ? と聞いてしまいそうなほどの密着。カップルじゃあるまいし傍から見たら勘違いされただろう。
まぁ木下の鉄壁の無表情を見ればカップルの後に“?”を浮かばせて、似てない兄妹に変換されただろう。いいところで兄に甘える妹、だけど表情は無愛想。

あぁこれならありえる。きっとオレが見たらそう思うだろう。

それでも結局、肩は濡れているもので途中から傘に入っても意味はない。
今、オレは自分の部屋で着替えているのだが、木下は家に着くなり速攻で助歌に拉致されていった。
別な召使いの話では、どうやら迎えに来るのを断ったらしい。あの図書室にいる間、つまりオレの授業中にだ。
そんなことは一言も言われていない。あの数少ない口数から考えて言う必要なしと判断したのだろうか、あえて言わなかったのかは不明。
それは後になって聞くことにしよう。けど、どっちにしても助歌に説教を喰らうことは確定している。

なんで迎えに来てもらわなかったのかね?

まさか黙って来たから意地になったのか!? まぁそんなことはないか。自分が傘を持って来たからいないと判断したのだろう。
無言の助歌は結構怒ってる証拠だが……木下なら何なく乗りこなせるだろう。
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