幻が視る固定未来
「名前で呼んでほしいと言った時に友達のように呼べと追加した。友達のようにというのが難しい。だからそのまま友達として今まで呼んでいたから」

確かによく覚えている。オレ自身が『友達感覚』で呼べと言ったことを。
だけどそれをそのまま感覚が難しいから友達として呼ぶというのは……なんとも木下らしいが、その話の流れだと木下は他には友達はいないということ。
――というか、オレ自身、木下のことを友達と思ったことはないからやはり木下の言葉は合っている。

『友達だと思っているけど相手にそのつもりはない』

それならば木下はオレのことを友達と思っている。
だったらオレは? 今考えないといけないのはそれだとオレは思う。

友達なんて作る気なんて毛頭なかった。けどそれはクラスメイトの話だ。召使いと友達になるなんて思ってもみなかった。
木下が召使いではなく友達になる。それは多分間違った解釈。木下は召使である大前提でオレの友達になろうとしている。
けど引っかかるのは“友達”という言葉。それをオレはなんであるか理解していない。
――理解してないはずだ。だけど木下が友達ならそれでもいいと、自然とオレは思った。多分これが友達というものだろう。

あぁ間違いない。友達とはこうゆうことをいうんだな。

「オレでいいのか。初めての友達なんだろ?」
「いい。けどそれは私も聞かなければならない」

確かに木下は初めての友達にオレを選んだ。けどそれはオレも同じこと。初めての友達に木下を選んだ。
だから返事など分かり切っている。

「あぁ、オレは木下と友達になりたい」
「了解」

返事はなんても召使いらしい言葉だが、友達になった。
初めての友達が木下有希乃という一人の召使い。召使いでありながらも友達である、最初なのだからこれくらいからが丁度いいんじゃないか。
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