幻が視る固定未来
日も落ちて空に赤みが掛かっている中、オレと有希乃はゆっくりと家まで歩いている。
オレの両手は色んな袋で塞がっている。もちろん一人でそんなに買わない。これは有希乃の分もあるから。

一方の有希乃は片手に小さな袋、サンダルの入った袋を持っている。
結局、オレも有希乃もサンダルを買った。まぁ本当に使うことがあるかは分からないけど、それでもこの暑い日ならば、出掛ける時にサンダルをはくことだってあるかもしれない。

そして結局帰って来たの門限である六時を十分だけ超えた後。
もちろんそんな時間に帰れば怒られる。それはオレではなく有希乃が、助歌に。オレだって怒られたというよりも注意されたが有希乃ほどではない。
もしオレが一緒にいなかったらビンタの一つあったかもしれない。それほど助歌は怒っていた。

原因は全て有希乃ではなくオレにある。
最近のオレはどんなことよりも有希乃と遊ぶことを優先している。だから勉強も訓練も怠っていた。学校の成績はどうあっても落ちることはないのだが、訓練では集中しない成果など出ない。だからすぐにバレる。
以前と違ってオレは一日の楽しみを見つけたのだが、それには代償がある。それがオレの道。オレが定められた道だ。
友達になった有希乃にもオレの正体、守護四神の玄武であるとは話していない。もう言うつもりなどない。
けど、オレは玄武の道を歩んでいる。いや歩むしかない。それがオレの生きる道だから。
本来ならその道に木下有希乃という存在は道端にある石ころ程度の存在だったのだが、今となれば道を分別する看板くらいに成長を遂げてしまった。

二つの道。
それがオレにある選択肢。

一つが言うまでもない玄武の道。

もう一つがあり得ないが玄武ではない道。その道の先は暗闇である。

オレの中にはその二つの道があるような気がする。どちらに進もうとも有希乃は間違いなく居る。だからこんな楽しい日がなくなることない。だから二つ目なんていらない。今のままでいい。

――ただ二つの目の道はより有希乃と楽しんでいられるというだけ。そんな贅沢は本来ならオレに許されていないから。
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