幻が視る固定未来
その日の夜。オレはいつもの部屋で幻視の訓練をしている。
けどオレは今だに幻視の扉を発動できないでいた。それは集中していないのはもちろんだけど、不安というか罪悪感がこの部屋に来るとあるから。

いつも有希乃にはなんの訓練かは言わないけど、ただ行ってくるとだけ言い、有希乃も見てみたいというのだが、それを命令までして止めるのが嫌だった。
有希乃もオレがどんなことをしているのか知りたいのだろう。友達以前に召使いであるのだからオレの行動を把握したいのだろが、それでも今の姿は有希乃には見せたくない。
こんな人として離れた力を持っていると知られ避けられたくはない。楽しい時間を削りたくない。

それがオレの本音。

「集中力が全くないですね。今日はもういいです」

何を作り出そうとしたのかも分からない幻がただオレの掌にある。本当に何を作ろうとしたのか覚えていない。
覚えているのは有希乃のことだけ。

「はぁ……」

自分が悪いと判断して、改めて訓練しようにもすでに助歌の姿はない。呆れて帰ってしまったのだろう。

「あぁ本当にダメだ。このままだと本当にダメだな」

溜息しか出ない状況だが、それでもオレは一人ででも幻視の訓練をした。
やらないと成長はしない。そんなことは分かっていたのに、集中していないと意味はないということは分かっていないから。

結局、オレがまともに幻視の力で作りだすのに成功したのはサッカーボール一つ。はっきり言ってこんなもの、以前なら何の苦もなく作り出せたのに今ではこんなに苦戦している。
そんな自分に腹が立った。
本当にどうしょうもない自分に腹が立った。
だからどうすればいいか分からず、オレは必要以上の神素を使おうとしたが音を立てずに見守っていた助歌に止められた。
助歌は出て行ったフリして最初から見ていたようだ。
最後に助歌にあやまり訓練は終了した。
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