幻が視る固定未来
助歌はオレに『悩みの元を絶たないとこの先いくら訓練しても意味はない』とだけ突き放すように言われた。

オレの悩みは分かっている。けどそれを“絶つ”という意味を……解決策を見出すことが出来ない。
原因は有希乃だが、それは答えではない。どちらかと言えばヒントの部類に入る。要はオレの考えた方。有希乃に秘密を作る罪悪感を感じなければいいだけの話。

なんだ、もう自分でも分かっているじゃないか。

オレが有希乃に秘密を作って何故、罪悪感を感じないといけないのだろうか。その必要が全くない。だって有希乃はただの…………。

「なんだって言うんだ? オレは……」

廊下を歩く足を止め、オレは立ち尽くした。
オレにとって木下有希乃は“召使い”と“友達”の二属性がある。けどどうあっても有希乃がここにいるのは召使いであるから。それがここにいる大前提。
―――けど、オレの口からははっきりとその言葉を吐き出せない。何故ならオレは有希乃を召使いではなく友達であって欲しいと考えているから。
だからオレは初めての友達である有希乃に嘘は付きたくないのだと思う。それほど大切な友達なんだ。多分これが“親友”というものなのだろう。

自覚して初めて分かった。やはり有希乃は友達だ。それも親友。
この罪悪感を解放するにはもう話すしかない。話してもし怯えさせたら、それが恐ろしくてオレは何も言いだせなかった。

「――ふぅ」

一歩足を踏み出せば有希乃に全て話そう。
そう決心を固めた瞬間、オレの足はまるで廊下に根を生やしたように動かせない。まるで足だけが別な存在のようだ。
抵抗なんてものではない。思いは固めても本心は拒否する。だから体は本心に従う。
ち、このままだとオレは一生この先に進めない……。
< 60 / 383 >

この作品をシェア

pagetop