幻が視る固定未来
そんな取り残されたオレの頭には『聞かない』という有希乃の言葉が暴れている。

そうだな、こんなに無理して言うようなことなら、いっそ聞きたくないと拒絶された方が楽だな。
これが一番の解決法なのか分からないし、きっといつかは言わないといけない時が来る。
けど、ようはそれが今ではないということは確かなようだ。
ありがとうな有希乃。おかげで前に進めるようだ。それと、

「おやすみ有希乃」

誰もいない廊下の先に挨拶をしてオレはやっと自分の部屋に戻ることが出来た。



次の日には有希乃は平然とした様子で現れて、昨日の夜のことなどまるで夢のように思えてしまう。
けど何も言えないにしろ、オレは一応、謝るだけ謝っておいた。『昨日はすまなかった』と。
けど有希乃は『気にしない』と言うのでこれ以上は何も言わない。

そうしていつもの雰囲気に戻り、オレは学校へと向かうのだった。
本当にあっさりとした朝だったな。自分でも昨日の夜が夢だと信じてしまうほど。
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