幻が視る固定未来
――最近ではクラスメイトとも普通に話している。恐らく一部では友達と呼べるものもいるんじゃないだろうか?
いや、向こうがそう思っているということ。オレは全く思っていない。
一番そう思っているのは芳原だろう。確かに勉強以外の話をよくするのは芳原だ。間違い無く芳原はオレのこと友達だと思っているだろう。

「もう木下さんがここに来ることはないの?」
「さぁな、有希乃はいつ現れるか分からない。あの時だって何も言わずに来たから」
「そっか、また会いたいと思ってたのに残念」

教室の一角、昼休みをオレは芳原と話していた。
最初は確かに勉強のことだった。けどそれは数分程度、すぐに話の話題は変わった。いつものことなのでオレも驚きはしないし普通に話している。
視線を感じないことから他のクラスメイトからもそれが自然と見えているようだ。

「なんで有希乃に会いたいんだ? もし用があるなら呼べるけど」
「ううん、ちょっとと言うか、かなり遅いけどあの時のお礼が言いたくて」
「あの時?」
「初めてこの教室に来て、去り際に私に宿題を教えてくれたこと。それと……灼蜘君と話すきっかけとくれたこと」
「なるほど」

口では納得しているようだけど、実際は半分しか理解していない。もちろん前半の部分だ。後半の部分はまぁ物好きといった所か、それともクラスで浮いていたオレを気にしていたのか、恐らくそんな理由だろう。
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