幻が視る固定未来
気が抜けた。それも全身の骨が溶けたかのように。

「まさかそこまで灼蜘が木下に頼っていたとは知りませんでした。どうすればそこまで信頼されるのでしょうね。本当にただの召使いとして見てますか」

なるほど確かに母上だ。中々鋭い。

「有希乃は初めて出来たオレの友達だから」

オレは安著の末、とんでもないことを口走った。けど今更口をふさいでも遅い。言いきってしまったから。
母上は驚きながらも、微笑を零し納得している。

「なるほど、友達ですか……それもいいでしょう。けどあまり浮かれすぎないで、生活スタイルを乱さないようにしなさい」
「はい、母上」

オレは母上の対応に驚きながら答えた。
そうしてオレは母上の部屋を出た。結論を出して。


とりあえず訓練についてはやはり進展はない。今のまま助歌が見る。これはやはり覆せなかった。
それと母上なりに有希乃を信頼してくれているということ。いや……母上は有希乃を自身を信頼したのではない。オレを信用したんだろう。
――そしてオレはまさかあそこまで有希乃を信頼、頼っているとは思ってもみなかった。
どうしてオレは母上が有希乃を解雇しようとした時、あんな反抗が出来たのだろうか。初めての友達と言うのは存在感がかけ離れているようだ。

残念な結果だけど得るものがあった。母上の部屋に行って後悔はない。むしろよかったと思う。
オレはそうしてその結果を一から有希乃に説明した。
元よりオレの言ったことなら従う有希乃だ。例えやっぱり無理だったと言っても反応はない。もう少し感謝してくれてもいいような気がするが、結局オレは有希乃のために母上の部屋に行ったんだと改めて心の中で笑った。
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