幻が視る固定未来
気がつけばオレの剣道は弓道くらいの成長を遂げていた。今ではまともに有希乃とも戦える。
あーだこーだ色々な文句を言ってきたが一度たりとも嫌だと思ったことはない。そうして続けた結果が今に至る。
やりたいと本気で思うことはこれほどの成果を上げるようだ。有希乃の訓練指導がよかったせいもあるだろうが。
だからこそ、全くの逆の理由で行っている訓練、幻視については成長どころか退化までしている。

やはり有希乃に黙って向かう訓練所は足が重い。
本当に有希乃の訓練とは正反対、次に来るのが辛いとも思う。
だからこそ助歌はいつも溜息ながらに『全く集中出来ていない』と口癖のように言う。

そんなことを言われなくても自分でも理解している。だけどどうしても集中出来ない。それでも以前のように全く幻視で創造が出来ない訳ではない。思った通りのものは創れる。
だけど違う。足りないものがそこには確実にある。言うならばオレの幻視で作られたモノは機械でコピーした用紙。本来ならば創造である以上、常にコピーではなくオリジナルでないと意味がない。

真似るのではなく生み出す。それが幻視の基本。

今の幻視はある意味では応用の一部ではあるのだが、まともに基礎も出来ない力で応用など欠陥品でしかない。まともな完成品を創ってからこそ応用が適用される、半端は許されない。
 ……何故ならオレは真の玄武を目指すものだから。
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