幻が視る固定未来
最近では助歌ではなく直接母上に相談することが多い。それはもちろん真の玄武を目指すため、真の玄武であった父を理解している一番の人だから。
そして真の玄武を見極められる人でもあるから。
けど、そんな数々のアドバイスも無意味だった。オレは常に欠陥品しか生み出せないでいるのだから。

“集中力が足りない”

あぁそうさ。一番の原因はこれ。前々から分かっているんだ。だからこそオレはより集中するようにした。
だから幻視でモノを作るまでに一応は成長……いや退化させた。出来るモノは全て欠陥品なのだから。

以前なら下手くそなりに創造していた。それは間違いなくオリジナルだったし、歪なもう少しで完成する品。
今のオレの作品にはない輝きを持っていた。
だからこそ昔のオレは幻視の力に誇りを持っていた。

だったら今の幻視に誇りはないのか……ある。間違いなく誇りを持っている。だけどそれは玄武としての力だから。
玄武としての体術は一人前になりつつあるが、幻視の能力においては半人前以下。
これだと真の玄武になどなれない。努力しているけどやはりそれは無理をしている。
いっそのこと有希乃に全てを話そうかと思ったことは多い。けど結局は何も言えずにいる。

有希乃は何も悪くない。ただオレが全てを……オレが化け物であること告白しても有希乃が“恐れない”と信用できていないから悪い。
けど前にも言ったけど、オレにはやっぱり有希乃が必要だ。毎日を楽しく過ごせるのは有希乃がいるからだし。
< 91 / 383 >

この作品をシェア

pagetop