幻が視る固定未来
「生活の乱れについては私だけではなく奥様からも注意を受けたはずです。だというのにあなたは変わらないで乱れたまま。直属の召使いがいながらどうしてそんなに乱れてしまうのですか」
「有希乃は関係ないだろ!」
「そうやって奥様にも怒鳴りあげたようですが私には意味はありません。むしろ怒鳴るということは認めているということ。心のどこかであなたはそう思っている。必ずどこかで木下有希乃という存在が邪魔していると自覚している」

有希乃がオレの邪魔をしている?
そんな馬鹿なことがあるか。ある訳がない……?

本当に?

あぁ本当だ。有希乃はオレにとって必要なんだ、邪魔であるはずがない。

「有希乃は邪魔ではない。邪魔であるはずがない」
「それは召使いだから、それとも……初めての友達だから?」

驚きはしない。母上に言った以上、きっと助歌の耳に入るとは思っていた。だからそんなことを言われるような予感はしていた。
だからオレは頷き肯定する。

「そうだ」
「よく見れば木下は確かに召使いと友達を要領よくこなしている。だけど幻視様、あなたはちゃんと木下を召使いとして見ていますか」
「もちろんだ。仕事中は召使いだし、休憩中は友達。オレだってちゃんと境界線を引いてる」

けど、オレの時だけ聞くということは即ち、助歌から見ればオレは有希乃を友達としか見てないように見えないんだろうな。
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