幻が視る固定未来
「なぁ、有希乃って告白されたことってあるか」
「ない」

空が赤から黒へと移り変わる頃合い、休憩時間にオレは今日の一連の流れを有希乃に説明した。ついでに親友らしき人から友達から始めて欲しいと言われたことも。

「別にいいと思う」
「何がだ?」
「付き合ってみても……?」
「おいおい、自分の言葉に自信を持てよ。どうして最後に首を傾げる」

有希乃は自分でも何故か分からないのか、首を傾げたまま停止していた。けどすぐに起動。

「よく分からない」

いや、そんなことを聞かれ得てもオレが分からない。
そういえば分からないと言えばもう一つ。

「付き合うっていうのがよく分からない。有希乃は誰かを好きなったことってあるのか」
「ない。だから私も分からない」

そっか、オレが初めての友達って言ったんだから当然と言ったら当然か。オレも人のことは言えないけど。
けど、本当に“好きな人”というのがどうゆう感覚なのか理解出来ない。きっと好物とは違う感覚なのだろう。

――けど、そんなことを考える意味はないか。どうせ勝手にオレは付き合う相手、いや釣り合う相手が現れるのだろうから。
だけど、オレに告白した女子生徒に聞いてみるのもいいかもしれない。けど「オレのどこが好きなの?」とか「オレが好きってどうゆうこと」なんて聞いてみるか……聞ける訳ないな。
そうなるとオレの身近で恋愛を知っていそうなのは……芳原か。実際にクラスメイトならみんな知ってそうだが、オレが気軽に聞けるのは芳原くらいだろう。

まぁ自分のことはいいとしよう。どうせ未来に決まった相手がいるのだから。だけど目の前で平然と返答した有希乃はどうだろう。このまま恋愛もしらずに生きていくというのは……なんとも言い難い。

しかしまぁ、有希乃は根が真面目だし、容姿だって悪くない。召使いだからもあるけど尽くすことも出来る。きっと出会いがあれば恋人などすぐに出来るだろう。

今更オレが心配することでもないか。

――だけど一瞬、恋人相手の男を考えた時、なんとも言えない違和感を覚えたのは気のせいだと思う。
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