らしくないけど

「…高野、聞いてんの?」

電話には出たけど、返事は一向に聞こえてこない。聞こえるのは騒がしい声だけ。

「は、何。高野?」

出たんじゃねぇの?

何これ、出るだけ出て放置?


『…加地くん?』

…あーもう…何なんだよ。

「……何で山田が出んの」

ムカつく。


聞こえたのは待ち望んでた高野の声じゃなくて、紛れもなく山田の声。

それがどうしようもなく嫌で。今一緒にいることとか、電話に出てることとか、高野が何して何考えてんのか分からないことが、死ぬほど嫌だった。

聞きたくねぇ。

もうほんとに、勘弁してくれよ。

俺、もう無理だって。

勝手だって分かってるけど、頼むからフラフラしないでくれよ。

< 105 / 143 >

この作品をシェア

pagetop