らしくないけど
高野のカバンを掴んで、まだ状況が分かってない高野の腕を掴んで引き起こす。
「じゃあな山田」
「…え?…なに、なんで…」
苦笑いで手を振った山田を高野はボケっと見つめてて、状況を理解しようと必死らしい。
それでも強引に引っ張ると、フラフラしながらも抵抗することなくついてくる。
「バカじゃねぇの」
個室を出て、そのまま店を出ればまた蒸し暑い空気に包まれる。
片手を上げてタクシーを止めた俺の口からこぼれ出たのは、そんな言葉だった。
…いやいやいやいや、バカなのは俺なんだけど。
「…何で加地くんいるの…」
その言葉に答えないままタクシーに乗る。
何で?こっちが聞きてー。
聞きたいことは山ほどある。言いたいことも、言わなきゃいけないことも。
…そんなことよりもまず、こうして会話できたことが一番嬉しいんだ。