らしくないけど


タクシーで約10分。

高野の家の住所を運転手さんに伝えて、それからお互い黙ったままで。

話したいことは確かにたくさんあるけど、ここでは言えないっていうか。つーかもっと落ち着いて話したいし。

…なんて思ってたけど、10分なんであっという間だった。まじで。


「…あがってい?」

「……どうぞ」


もうすでに酔いが覚めてんのか、いつもと違う様子の高野は素直に俺を家に招き入れる。

高野の家に来てこんなに緊張したことねぇ。

ていうかこんなに意識したことねぇ。


あー…何から話そう。

こういうとき、どうすればいいんだっけ。

そもそも俺のこと避けてるやつ強引に他の男から拐ってくるって結構すごくない?

今更恥ずかしいんだけど。

それも久しぶりに2人で話すし、それが花火大会以来って大問題だって。やっぱり。
< 114 / 143 >

この作品をシェア

pagetop