らしくないけど
「なあ……」
何も答えないし、顔も上げない高野が何考えてんのか分からなくて、無意識に体が動いた。
細い手首を掴むと、驚いたように体をビクリと震わせた高野はゆっくりと顔を上げる。
「え……」
「あたし別に、嫌だったわけじゃない…」
「待って、何で?」
酔っ払ってるからってのもあるのかもしれないけど、ようやく見えた高野の顔は真っ赤で、涙目だし何かよく分からないけど、見たことない顔だってことだけは認識。
いやいやいや、これはもう好きな男に見せる顔じゃないの。普通は。
何なのマジで。
「え、何これ俺どうしたらいいの」
「加地くんが…っ」
「俺が、何?」
なるべく優しく、高野が話しやすいように聞くと、その視線を上げてキュッと唇を噛んだ。