らしくないけど

「あー、うん。知ってる」

有名じゃん、山田。

うちの部署の女もたまに騒いでるし、男友達の口からその名前を聞くこともある。いいやつらしいし。


「高野、どう?」

「あー…じゃあ行こうかな。この前すっぽかしちゃったし」

「やった、じゃあ行こう」

その言葉に時計を見れば、もうすっかり休憩時間になっていて。

俺も昼食いに行こうって思って立ち上がると、高野は財布を持って山田の後についていく。

…今日は財布持っていくわけ。

お前この前俺のとこ来た時はポケットに小銭だっただろーが。

余所行きかお前。

なんて言う間もなく出て行ってしまったから、ボーッとドアの方を眺めてた。


「加地ー?」

「あ?」

声をかけられてその視線をやっと逸らす。

「え、何怒ってんだよ。昼飯行こーぜ」

「怒ってねーわ」

「ええ、眉間にシワ刻んで何言ってんの。まあいいけど、腹減ったし行くぞー」

同僚で一番仲がいいと言ってもいいこの男は、高野ともそこそこ仲が良くてたまに3人で飲みに行くこともある。

牧田誠二(マキタセイジ)


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