らしくないけど
欲しいものは
――――――
―――――――…
「うっわーどうしよう俺緊張してきた…」
「茉央と先生の結婚式なんだけど」
「そうだけどさー、なんつーか、親の気持ち?っていうか?」
そんな会話が目の前で繰り広げられてて、思わず呆れてため息が出た。
親の気持ちって何だ。お前咲良の親じゃねーし、そもそも血縁関係一ミリもないだろ。
「早く入れよバカップル」
このドアの向こうには写真で見たのとは別のウェディングドレスを着た咲良がいるのに、白城と高橋が立ち止まって入れねえ。
2人の間に割り込んでドアに手をかければ、「心の準備が!」なんて白城のでかい声が耳元で聞こえる。
「うるせーなマジで」
白城の言葉なんて無視してドアを開ける。
「咲良?」
先頭で入った俺に続いて白城も高橋も入って来たけど、立ち止まった俺の背中に2人ともぶつかった。
「あ、加地くん…」
鏡越しに目が合って、振り返った。
「シロと梨花も、来てくれたんだ」
ゆっくり立ち上がった咲良は、やっぱり写真で見たものとは違うウェディングドレスを着ていた。