らしくないけど

「蓮くん…」

「……ダメだ、俺」

口元を手で覆った蓮くんは、困ったように笑って咲良を見つめる。

それでも嬉しそうなのが伝わるくらいには、この2人が想いあってることを俺らはちゃんと知ってる。


「じゃあ、行くか」

白城と高橋の背中を押してドアに向かう。

式前の2人の時間。

それを邪魔するほど、空気読めないわけじゃないし。


後ろから聞こえて来た会話に思わず笑ってしまったのは、今日もやっぱりバカップルだな、と思ったからで。

「…どうしよう、綺麗」

「んふふ、蓮くんもカッコいい」

「幸せだ、俺」


部屋を出る前、最後に聞こえた言葉に安心した。


「俺と結婚してくれて、ありがとう」


気持ちがすっと軽くなったのはきっと、2人が幸せになってくれるからで。

俺の中にあったモヤモヤがそれで消えてくれたからで。


結婚おめでとう。って、心からそう思えて、安心したんだ。

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