らしくないけど

「俺この前給湯室行こうと思って聞いたんだけどさー。あ、怒んなよ?」

「何、怒んないし早く言えよ」

そもそも俺に関係ある話なのか。

「立ち聞きしただけだけど、郁ちゃん、加地と付き合ってんのかってよく聞かれてるよ。きつい先輩いるじゃん、その人だけじゃないみたいだけど」

「は?まじで?」

女の先輩にそんな風に言われてるなんて知らない。

あいつ、俺のことで何か言われてもあんまり言ってこないし、辛そうな素振りも見せないし。


「なあ、それ誰?」

「え?ああ、その先輩?ほらー、いるじゃん、あのきつそうな女の先輩のグループ。あの中の誰かが加地のこと好きなんじゃない?」

「ふーん」

「だから俺怒んなって言ったじゃんかよー。眉間にシワ寄ってるから、加地こえーよマジで」

女の先輩?知らねー。

俺に直接連絡先を聞きに来る勇気もないみたいだし、それを断られたならまだしも、ただ高野に文句を言うのは気にくわねーな。


「…怒ってねーし。いいから早く昼飯食いに行こーぜ」

「加地くんこっわー」

「うるせぇ」

まああいつは自分からどうにかしてくれと頼んでくるようなやつじゃないから、それならどんなもんかだけ見てやろうと思う。

そのあとどうするかは、見に行った上でその時決めよう。

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