らしくないけど
「あたし今食べちゃおっかなー」
「お好きにどうぞ」
「加地くん甘いもの好きなの?入社してこれだけ経って今さらだけどさ」
「ほんと今さらだな。好きだけど」
知らないのお前くらいだろ。
世の中にはバレンタインって行事があって、ここの女子社員は何人か俺に甘いものが好きかどうか聞いてきたけど、こいつの中にバレンタインなんてもんは存在しない。
バレンタインはこいつといたはずなのにそんな素振り一切なかったし、まあもちろんチョコなんてもんくれるわけなかったけど。
ただ高野の家で飲んだだけ。
「そうなんだ。じゃあ何でバレンタイン一個も貰わなかったの?受け取ってくれなかったって嘆いてる子いたけど」
「半笑いじゃねーかお前」
「いや、加地くんってほんと外見で得してるよなーって思って。世の中の男だったら喜んで受け取るとこじゃない?」
「お前マジ失礼。一つ受け取ったら全部受け取んなきゃなんねーじゃん。ホワイトデー考えただけで恐ろしいわ」
ガサガサと音がして横を見れば、包みを開けてる高野がいて。そのガサツさにもう今さら驚きもしない。
「女の子が好きそうだよね」
「何目線だよ」
「高野目線」
「あーそうですか」
一口かじってしばらくして、「甘い」なんて呟いた高野は立ち上がった。