らしくないけど
選んだワンピース
ガサガサと音がする袋。
手に持ったその中には酒の瓶が何本か入っていて、それを貰った時一番に浮かんだのは高野の顔だったから、今あいつの家に向かってる最中で。
休みの日に押しかけるのは今日が初めてだから、今日初めて連絡先聞いとけば良かったって思った。
…まあ、いなかったらいなかったでいいけど。
いなかったときのこと考えて車で来ればよかったか、なんて一瞬考えたものの、あいつがいたら絶対飲むことになるし帰りは歩きだ。
免許は去年とったばかりだし、さすがに飲んでも運転できるような技術は持ち合わせてない。その前に捕まんのも嫌だし。
「303…」
マンションの前について、オートロックの玄関でインターホンを鳴らせば、数秒後に声が聞こえてきて。
「あれ、加地くん?」
「おー、開けろ」
「何で?今日約束してたっけ?」
「いいから、早く」
向こうからは俺の顔が見えてて、約束をしてもいないのに来たことに驚いてる。
こういう時に困るんだな。
今から行っていいかという連絡も出来ないのは確かに不便。
—ピンポーン…
玄関の前についてインターホンを鳴らすと、すぐに勢いよく玄関が開く。