らしくないけど
「どうしたの加地くん」
「ん、これ持ってきた」
休みの日なのに高野はすっぴんメガネじゃなくて、ちゃんと化粧はしてるし髪形もちゃんとしてるし。
「えっ!何これ!」
「知り合いに貰った。俺の家よりお前の家にある方がいいと思って」
袋を受け取ってリビングに入っていく高野は「あがっていいよ」なんて言って嬉しそうに笑う。
酒持ってきてこんなに喜ぶ女いんの?
「何で今日そんな余所行きなんだよ?」
「あ、そうだ。今日山田くんに誘われてて、もう少ししたら出るんだよね。どうする?」
「は?どうするって…」
山田とご飯食べに行くなら俺帰らないとじゃん。
うわ、こういう時面倒なんだな。
前もって連絡って大事。マジで。
「多分そんなに遅くならないし、ここで待ってるかなーって。一緒に飲むでしょ、これ」
「ここで?」
「うん、だから歩いて来たんじゃないの?」
それにしても、家主がいないこの家で彼氏でもない男を待たせようとする感じが高野らしい。
「…鍵貸せよ、お前出るときにコンビニ行くし。帰ってくるまで一人で飲んで待ってる」