らしくないけど

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時計を見れば、もう針は11時を回ってて。

そんなに遅くならないって言ったのはどこのどいつだと電話してやりたい気持ちを何とか押し殺した。

だって電話できねーもん。

飲み始めてどれくらい経ったか分からないけど、まあいい感じに酔っぱらってるし、鍵持ってるし帰るに帰れない。

あの女マジで何。


歩いて帰れる距離に家があるから別にいいけど、あいつ俺がここで待ってるってこと忘れてんじゃねーの。

酒は一瓶じゃなかったし、人の家で、しかも家主がいない状態でベロンベロンになるわけにもいかない。


なんて思っていた時だった。

—ピンポーン…

インターホンが鳴って、多分高野が帰ってきた。

立ち上がって受話器を取ると、画面に高野の姿。

…と、山田。


「あの、夜分遅くにすいません」

多分鍵を持ってないから家に誰かいると思ったんだろう。なぜか山田がそう言ってきて、よく見れば高野は目を閉じている。

は、こいつ寝てんの?

付き合ってもない男の前で?

マジで危機感なさすぎじゃね?
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