らしくないけど
「加地くん、ずっと好きな人いたんだもんね。そりゃあたしなんか眼中に入らないよ」
「…別に好きだったわけじゃねーよ。ただ、一番大事だったってだけ」
「それが好きだってことじゃないの?」
好きだったんじゃないかと言われたら、自分でもよく分からない。
でも大事で、幸せになってくれなきゃ困ると思っていたのは本当で。それが出来るのは蓮くんだけだってことも思ってた。
結婚式が控えてて、蓮くんの隣で幸せそうに笑う咲良を見ると、素直に嬉しいし結婚式が待ち遠しいと思ったんだ。
「とっくに吹っ切れてるよ」
「ふーん、そっか」
「ニヤけてんなよ」
「いやー、だってそれならようやく次を見れるってことでしょ?あたしにもチャンスありじゃない」
ガサガサと袋の音がして、俺がコンビニで買ってきたつまみを探る高野。
ムードの欠片もねーな。
「あ、これあたしが好きなやつ」
「俺も好きだし」
「さすが。食べていい?」
「どーぞご自由に」
今まではチャンスすらないと思われていたんだろうか。
そんなつもりはなかったけど、確かに高野は今までそんな素振りすら見せてこなかった。他の女子社員はガンガンアピールしてくるけど。