らしくないけど

｢ぶりっ子してほしかった？｣

｢は、想像したら笑えるな｣

｢失礼だな｣

｢する気もなかっただろ｣

多分高野は分かってた。

俺が自分を恋愛対象に入れてないってことに。

だから多分最初は一緒にいて楽だったんだろう。男女でどうこうならないだろうなって分かってたから。

何年か見てると分かってくるけど、こいつは前の彼氏みたいなタイプは合わないし一緒にいてしんどいんだと思う。


｢加地くんそういう女興味ないでしょ？そういうのが好きなら少しくらいは頑張るけど｣

｢ねーな。むしろ苦手？｣

思いっきり着飾られるよりは一緒にいて楽な関係の方がいい。

それは多分高野も同じだから。一緒にいて楽なのはその辺の価値観が似てるからなんだろう。

｢だと思った。あたしも常にキラキラした王子様は苦手だもん。カッコいいけどね｣

｢山田みたいな？｣


少し気になっていた山田のことは、酔っぱらっていればすんなり聞けた。何の躊躇もなく。

｢山田くん？｣

｢営業部の王子様って言われてんじゃん。しかも好かれてんだろ、それはどうなんだよ｣

こいつは俺のことが好きだと言うのに、山田とご飯行くし何か連絡先も交換してるみたいだし。連絡先も知らない俺は何なんだろう。