らしくないけど
「あいつそんなに大人しい女の子ってわけじゃないし。何、気にしてんの?咲良のこと」
「そりゃ気にもなるでしょうよ。加地くんがずっと思い続けるようないい女ってことでしょ?それに勝たなきゃならないんだから」
あの蓮くんにあれだけの独占欲を出させる女は、後にも先にもきっと咲良だけなんだろう。
そういう意味では確かにいい女なのかもしれない。
…ムカつくくらい思い合ってて、結局心のどこかにお互いの存在がずっとあったことはもう、咲良から聞かなくても何となく分かっていた。
それでも俺の、俺だけのものでいてほしいと思うくらい好きになっていたのは、やっぱり高野が言う通り咲良がいい女だったってことか。
「…いい女だな、確かに」
他の女のことを話してるのに黙って笑顔で聞いてくれるお前も、十分いい女だと思うけど、俺は。
「加地くんもいい男だよ」
「…そりゃよかった」
「ほんとに、いい男だよ」
「何、何でそんな褒めてくれんの」
ソファにもたれ掛かった高野の目は今にも閉じてしまいそうで、グラリと揺れたグラスを慌てて受け取る。
「は、今寝んの?」
「んー……加地、くん…」
「なに」
ああこいつ寝るなって思った時にはもう、幸せそうな顔で完全に目を閉じて夢の中に入ってしまったらしい。