らしくないけど
ベッドに下して顔をちゃんと見れば、少し化粧がよれたせいでいつもより幼く見えて。長いまつ毛とピンク色の唇がやけに目に入る。
綺麗な寝顔だった。
もともと綺麗な顔だけど、多分寝顔なんて初めて見たから。
やっぱこいつ黙ってりゃもっとモテんのになって。
だけど多分、こいつが会社の女子社員のような女だったらこんな風に頻繁に飲みに来るようなことはなかったと思うし。
だからって仲良くならなかったかと言われればそれは分からない。高野がそういう女であるイメージが全くわかないからだ。
「…加地さん…」
「は、何お前起きてんの?」
「…振動で…運んでもらったみたいでごめんよ…」
俺がベッドに下した振動で起きたらしい。
ただ目は閉じたままだし、起き上がる気配もない。
つーか加地さんて。寝ぼけてんなこいつ。
「高野さん、俺帰るんですけど」
「あー…、そうですか…」
聞こえてんのか聞こえてないのか正直分からないくらい返事がフワフワしてて、多分もう起き上がる気もなさそうだった。
「お姉さん、鍵はどうしたらいいですかね」