らしくないけど
何かよく分からないキーホルダーが付いた鍵をチャリチャリ鳴らせば、高野はようやく目を開けた。
「…そうっすねー…」
「起きてます?」
「はい、何とか」
なんて言ってるけそ、開いた目はもう今にも閉じてしまいそうで。多分起きて見送りなんてことはないだろうな。
「明日起きれんの?」
「それは大丈夫」
「遅刻すんなよ」
こんなに眠そうなのも初めて見たし、明日は普通に仕事あるからこっちが不安になる。
遅刻してくるようなやつじゃないって分かってるけど。
「んー…、鍵、ポストに入れといて…」
あー、その手があった。
さっきと違って本人いるし、そうしてくれと言ってるんだから大丈夫だろう。そう思って立ち上がって思い出す。
「高野、連絡先教えて」
「…連絡先?」
再び閉じた目を開けた高野は、不思議そうに俺を見て。
「何でまた…」
「不便ってことに気付いた」
俺のそんな言葉にまた目を閉じたまま少し笑った。