らしくないけど

高野が席を立ってすぐ、また隣に誰かの気配を感じて。

「加地くん、ちょっといいかな」

「あー、うん。何?」

「ここ分からなくて」

頬をピンクに染めた同期の女が、後ろから声をかけてきた。

俺じゃなくてもいいようなことをわざわざ俺に聞いてくるあたり、少なからず好意を持ってくれてはいるんだろう。

どうやら俺は、人気らしい。

高野情報だけど。


「あー、ここはこれ。ほら、こっち使った方が簡単だし」

「ほんとだっ、ありがとう」

「ここだけ?」

「あ、うん。あとは大丈夫」

ここだけなら隣に男いるんだからこいつに聞けよ。

隣を見れば、その男…一つ上の先輩も苦笑いで俺を見て。ため息をついてパソコンに視線を戻した。

何となくこの先輩も理由が分かってるんだろう。

だからなるべく口出ししないようにと見て見ぬ振りを決め込むつもりらしい。

あんたでも教えれるレベルだよこれ。つーか、俺より先輩なんだから、俺が教えるよくらい言えねーかな。
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