らしくないけど

「…まじで」

「何が?」

「いや、こっちの話」

好きなのかもしれない。

「酔っ払ってたけど、ちょっとだけ覚えてるんだよね。あの日のこと」

ガサツでおっさんみたいなとこあって、おしとやかとはかけ離れてて、タイプかって言われたら違うって言えるのに。

何でまたこいつのことを。


「加地くんすごい優しかったよね」

「は?」

「ほら、ベッドまで運んでくれたでしょ?なーんとなくだけど覚えてて、思ったの」

それでも隣にいたら楽しいんだろうな、とか。

いい意味で緊張感がなくて、気を使わなくてもいい相手だな、とか。

考えればいくらでも理由は出てくるのに。


「あたしやっぱり加地くんが好き」

あーやばい。

「一緒にいると楽しいよ。ご飯も美味しく感じるし、お酒飲んでても楽しいし。あのワンピース来て行くようなお店にも一緒に行きたい」

< 54 / 143 >

この作品をシェア

pagetop