らしくないけど

今まで干物女で意識すらしてなかった高野が、好きだって実感した途端に可愛く見えて。

さっきまで飲んでたのは焼酎で何ならロックで、それも一杯目じゃないってことが分かっていながらもうおっさんだなんて思えない。

…何この心境の変化。

「浴衣着て行こうかなー」

「は、マジで」

「嘘。持ってないわそんなもん」

「だろーな」

いまだにヘラヘラと笑ってる高野はグラスを持つと残っていたお酒を飲んで、「加地くん最近変だよね」なんてポツリと言った。


「…変じゃない」

どうしてほしいんだよ。

「変だよ。すごく、変」

このままじゃ俺、さっきのCMの映画みたいな展開になりそうな気がしてんの。

そんな展開はさ、一回経験してんだよね。出来ればもう経験したくないっていうか、ここで頑張らずに高野のこと持っていかれたら俺多分すげー後悔する。

…なんて言わないけど。
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