らしくないけど
『もしもし、加地くん?』
少しだけ久しぶりに聞いた咲良の声は、心なしか嬉しそうで。
何だ。何で喜んでんだ。
なんて考えてたら電話の向こうから声が聞こえてくる。
『浴衣がどうかした?』
「あー…、持ってんなら今週の日曜日貸してくんねーかなって」
『……デート?』
あー、こいつニヤニヤしてんなって声色で分かるし。
何だよ。それで電話変わった時から喜んでたのか。
「…うっせ」
『あー!デートだ!絶対デートだ!』
電話の向こうで聞こえる「蓮くん!」なんて声に思わずため息が出た。おいこら、デートじゃねーし俺がいないとこで騒ぐんじゃねー。
「おいおいおい、聞いてんの?浴衣持ってんのか聞いたんだけど俺」
『んふふ、ごめんごめん。持ってるから貸すよ、せっかくデートだもんね』
「…ニヤニヤすんな」