らしくないけど
「ちゃんと彼女になったら紹介してくれるんでしょ?」
咲良の隣から顔を覗かせた蓮くんがそう言う。
大方収集が付かなさそうなこの話に区切りをつけてくれようとしてくれてるんだろう。ほんと大人。蓮くんに感謝。
「ちゃんとするって」
「ほんと?約束だよ?」
「はいはい約束」
頑張ってね、なんて言って浴衣が入った紙袋を手渡してくる咲良は、何だかすごく緊張してるように見えて思わず笑みが零れた。
「何、何でお前が緊張してんの」
「だって加地くん弱気なんだもん」
「…んなことねぇし」
「ほんと?」
「マジで。大丈夫」
そのためにこうして浴衣借りてんだよ。
後悔しないように。
このまま黙って山田に持って行かれるような、あの映画みたいな展開が待っていないように。
「…頑張るって決めたし」
「そっか」
俺頑張るから。