らしくないけど

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黒の生地に大きなひまわりの柄が印象的な浴衣。

赤い帯がよく映えてて、綺麗だった。

前に咲良が着てるとこを見たときのことは、何となくだけど思い出せる。ボヤボヤしてはっきりはしてないけど。


「……おっせーな」

お互いの家は知ってるし、そう遠くもないけどわざわざ待ち合わせ。

それは高野が望んだことで。ちゃんと着ていくから、なんて言われたら頷くしかなかった。別にそこはどっちでも良かったし。

約束通り俺も浴衣を着て、高野が言った待ち合わせ場所で待ってんのはいい。


「あっつ…」

待ち合わせ時間とっくに過ぎてんですけど。

高野さん。どういうことっすか。

いや別に遅れるとかそんなのはいいんだけど、連絡来ないし電話でないし。何それ気になって花火どころじゃないんですけど。

つーか何かチラチラ見られんのも気になるし。

何なの。浴衣の男が一人で立ってんのってそんな珍しいわけ。

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