らしくないけど
この人ごみの中だからもしかして見逃したか。なんて思ったけど、ここを指定したのは高野の方だ。
本人が迷子なんてことはない、はず。
そこまでバカじゃねーよなさすがに。
「加地くん…!」
下駄の音が微かに聞こえてきて、それと一緒に高野の声も聞こえた。
あー、やっと来たか。
なんて思いながら辺りを見回すけど、人ごみの中で高野の姿をなかなか見つけられない。決して小さいわけじゃないのに。
「加地くん!」
「あ…」
声が聞こえてきた方向に、見覚えのある浴衣が見えた。
……いた。
「ごめんね遅くなって!着るのに時間かかっちゃって…」
…あー、もう。
何だよ、ちょっと心配したんだけど。
「…加地くん?」
……俺結構重症かもしれない。