らしくないけど


相手はガサツな干物女のはずで、その印象は今も変わってないんだけど。それでも可愛く見えるんだからもう重症だ。

「あ、たこ焼き食べたい」

「は、お前さっきイカ焼き食べてたよな」

「うん、全然足りない」

色気より食い気って言葉が当てはまりすぎて。

見た目はおしとやかにわたあめとか食べてそうなのに、そんなものには見向きもしないとこが高野らしいっていうか。


「たこ焼き一つください」

「おっ、おねーちゃん可愛いから一個サービスしとくよ!」
 
「わー!ありがとうございます!」

…なんて、お前どこ行っても優遇されんな。

どんだけ食うんだよ、なんて思いながら俺もちゃっかり買ってあげてるから、たこ焼き屋のおじさんと大して変わらねぇ。


「ん、花火始まるみたいだね」

「移動するか」

「うん。あ、加地くんあげる」

たこ焼きを差し出す高野はいつも以上にニコニコで、周りのことなんてお構いなしに早く食べろと口元にそれを近づけてくる。
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