らしくないけど
「あ、始まった」
絆創膏なんて高野が持ってるわけねーし、当然俺も持ってない。買いに行くか、なんて思ってた矢先に花火始まるし。
「高野」
「何?」
今も動く人ごみで、足痛いのにそのまま花火見続けるほど冷めた人間でもないわけで。それも相手は一応好きなやつで。
「え…」
少しでもマシになれば、なんて思って高野の手を掴んで道の端の方に寄る。少し見えにくくなるけど、そんなこと今はどうでもいい。
「加地くん…?」
「フラフラしすぎ。見てるこっちが不安になるから」
浴衣着て来いって言ったのは俺だし、慣れてないことなんて分かってたのに気を使ってやれなかった。平気だって言って笑うようなやつだけど。
「あの…手…」
繋いだままの手を見て目をパチパチさせる高野がいつもの高野じゃないみたいで調子狂う。
「意外と小さいな」
「え?」
「手、思ってたより小さいな」
俺バカ。何言ってんのそんなことどうでもいいわ。