らしくないけど

思い出せるのはほんとに、好きだと言った後の高野の驚いた顔だけで。それ以外はほんとに何も覚えてない。

何か言えば良かったんだろうけど、残念ながら言葉は何も出てこなかった。

……嫌だった…なんてことはない、はず。

だって高野は俺のこと好きなんだし。

……いやでも、最近山田といい感じだったみたいだし、ほんとのとこはどうなのかなんて高野にしか分からない。


「何で無言?言うことなんていくらでもあるじゃん」

「んなの俺に聞くなよ」

「加地ってそんな感じ?意外なんだけど」

「そんな感じって何だよ」

「もっとサラッと彼女出来てそうなイメージだったし。こういうことで悩むんだなって思って。」


今までこういうことで悩んだことなかったし、咲良の時はまた違った感じだったし。あれはまた事情が違う。

「…で?」

「は?」

「は?じゃなくて、どうすんの?」

どうすんのって……どうすればいいか分からないから悩んでんだよ。


普通におはようってなるか?俺がじゃなくて、向こうが。

いやいやいや、そんなわけ!!ないだろ!!

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