恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
やたら長い商品名は聞き取れないこともある。
エクストラアンチエイジングリッチモイストリペアクリーム! って、なにかの呪文ですか。小枝を持って叫んだら、守護霊でも呼び出せそう。
そんなこんなで、毎日桑名さんに教育されながら仕事をこなし、毎日十一時頃にはもうぐったりしてしまっていた。
「今戻った。何もなかったか」
すりガラスルームに戻ってきた日下部長の声を聞き、倒れかけていた背がしゃきんと戻る。
ここで倒れるわけにはいかない。まだ私にはやるべきことが残ってるんだ。
と、RPGの主人公になりきり、心の中で自分を励ます。
まだ装備は布の服と木の棒だけで、ぶたれたらすぐ倒れそうな感じ。
うなずき、また画面に向かってキーボードを叩く。
今まで桑名さんが全部一人でやっていた仕事だ。私がやっているのはその半分くらいなもの。なのに全然追いつけない。悔しい。
一心不乱に仕事に打ち込んでいると、日下部長の顔を見ることも少なかった。
異動した日の夜は、『明日から見惚れて仕事にならなかったらどうしよう』なんて心配もしたけど、それは取りこし苦労だった。部長の挙動なんて気にする暇もない。