恋の罠にはまりました~俺様部長と社内恋愛!?~
「こんな私でも、いいですか?」
ぼろぼろと涙がこぼれる。
夢で終わらないで。こんな素敵な奇跡を、一晩の夢で終わらせられるわけがなかったの。
「こんな私でも、抱きしめてくれますかっ」
あなたにとって一時の気の迷いでも、私はこの奇跡を手放したくない。
そんな思いを込めて叫ぶと、日下部長が動いた。
つかつかと大股で近づいてきたかと思うと、思い切り抱きしめられた。
「当たり前だ」
低い声が、耳をくすぐる。
壊れそうなほど高鳴る胸に、日下部長の香りを思い切り吸い込んだ。
このまま息が止まってもいい。残酷な現実にさらされる朝なんて、永遠にこなくていい。
そう思う私の気持ちをよそに、日下部長はゆっくり体を離し、代わりに私の手を握った。
「続きは、人のいないところで」
そうささやく部長の手を握り返す。
身分も違う。つり合っていない。だけど、そんなこと今は関係ない。
靴の片方だけ置いて帰るなんてできないの。
私は靴擦れをした足を引きずりながら、必死で彼についていく。
すると彼はそれに気づき、歩く速度をゆるめてくれた。
そんな小さなことが、とても幸せなことに思えた。